冬の時間へ

冬時間を、近い将来廃止しよう、という論議がされているヨーロッパ。
今週の火曜日、朝7時半のあまりの暗さに「これ、夜だよ」と、
朝ランを走ったのに、目が全く覚めないぐらいでしたから、
今年も、今夜とうとう冬時間が来ることは、ひとつのなぐさめです。
なぐさめという言葉が出てきてしまったのは、
ベルギーが現在、コロナの第二波の渦中にあるからでもあります。
ベルギー全土のレストラン(一体いくつあるのでしょうね!)が
今週の月曜日に全て閉まってしまったおかげで、
夜の仕事や練習の帰りに通るブリュッセルの町角も閑散としていて、
人通りも激減し、寂しいったらありません。
その上、バスや電車に乗るところでもみんなちょっとピリピリしていて、
火曜日の夜、バス停のそばで私は女の人にぶたれました。
(彼女はその近辺でいつもお酒に酔っている人なのですが、
小さめの人を叩く標的にされたとしか思えない。
そばにいた背の高い人は平気だったから。
なんにしてもまさか、ぶたれるなんて。)
明くる日の水曜日、夫が心配して、自分は駅に行く用事もないのに、
南駅まで一緒に歩いて見送ってくれましたが、
ボディガード付きで出勤したのは結婚生活でも初めてじゃないでしょうか。
春の外出制限の時に店じまいした空きテナントがちらほらあることを除けば、
普通のお店はほぼ開いているのにここまで変化したのですから、
私の住んでいる地域は特に、
「レストランによって」夜まで賑わい、治安が守られていた場所なんだ、
と改めてわかりました。
コロナの影響でどこも道にテラスのようにテーブルを出していましたから、
逆に、以前より通りが賑わっていた夏から秋を過ごした反動もあります。
そんな週を過ごして、昨日金曜日に、文化活動(映画館、美術館、
小規模な演奏会など)、スポーツ、宗教などの集会(教会やシナゴーグ、モスク)、
あとは結婚式やお葬式などの私的な集会についての、
ベルギー政府の発表がありました。
(身近な状況からも病気になってしまう人は多くなっているので、
きっとそちらの規制も厳しくなるだろうという予想があったのに対し、
規制は10月のものと同じ程度で、レッスンやコンサートや教会のミサも
続けられることがわかり、今日は本当に胸を撫で下ろしているところです。
*この文章を書いた4時間後に、今度はブリュッセルの19人の区長さんと市の責任者の
話し合いの発表があり、市内では演奏会は11月19日まで行えないことが
決定されてしまいました。
ミサに関しては発表待ちです。
また、今まで深夜0時からだった外出禁止が、
夜10時から朝6時までになってしまいました。
**さらに数時間後、娘が家に来て「大学も11月19日まで閉鎖だ〜」
と教えてくれました。
その直後、今日の夕方のミサを弾いている夫から
携帯メッセージが来て、
「教会も閉めるって話だよ」
ということです。
せっかく書いたので以下の文章は訂正しませんけれども
ご理解よろしくお願いします!)
先週の自分の日記を読むと、
「学校関係、若い人たちの関わっているところはなんとか閉鎖になりませんように」
と、なぜか(日記なのに)祈りが書いてあります。
レストラン関係は犠牲になったけれど、学校は犠牲にしない、と
いう新学期の対応なのかなと想像しました。
朝、子供達が学校へ行くかわいい声が道から聞こえてくるとか、
楽器を持った人たちが音楽院に通う姿とか、
彼らもずいぶん厳しい新しいルールの中で勉強を続けているようだけれど
少なくとも社会の中に居続けてくれている、
私たちが普通に彼らの姿を目にすることができる、
そのこと自体が貴重なものに感じられます。
治安ってそういうものなんだなと、
初めて知った気がします。
それを裏返して考えると、
私が自転車に乗って教会に練習に行く姿だって、
社会の治安に貢献しているのかもしれません。
自転車ならマスクをせずに乗れる決まりなので、
最近ではブリュッセルの人たちも坂にめげず、
よいこら自転車を漕ぎまくっていて、
のろのろ漕いでいると後ろからきた自転車に
左側から追い越されることもしばしばあります。
「こんな街ならいいな」と予想するものからは、
ずいぶん開きのある現在の街の姿ですが、
車を締め出して歩行者区域が広げられ、
伐採もありましたが全体では木が増え、
そのせいなのか、我が家の周辺では、
ブリュッセルの中心街にもかかわらず、
小鳥の歌は、少なくとも去年の二倍に増えました。
私の目覚ましは鳥の声の録音ですが、
先週、それと同じ鳥の声が外で聞こえたとき、
私はびっくりしてしまったのです。
耳をすます。
冬時間になってもそんな毎日が続きそうです。